First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜

S2 歌姫

コータたちのバンドは「Uta-Hime」という名前だった。

配られたパンフレットを見ると、Uta-Himeのヴォーカルはティアという名前で遠い南の島の生まれらしい。

三歳のときに音楽に目覚め、ピアノ、ギター、エレクトーン、ボイストレーニングを受けてきたそうだ。

パンフレットに書かれているのはそれだけだった。

一方コータについては、天才ベーシスト、としか書かれていなかった。

私にはコータのベースが上手かったかどうかはわからなかったけれど、真剣にベースを弾いているコータはきらきら輝いて見えた。

初めて会ったときの印象と違って、大人びて見えた。

コータがバンドをやっているなんて全然知らなかった。

あれからメールアドレスを交換して、何度もメールのやり取りをしているけれど、そんなこと一言も言っていなかった。

言ってくれればよかったのに。

何となく寂しい気分になった。

私も音楽好きだから、話して欲しかった。

そうすればコータのこともうちょっとわかったかもしれない。


私と真咲さんはUta-Himeの演奏が終わった後、コータに会いに行くことにした。
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