First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜

S4 夏の終わり

真咲さんの家から自宅に帰ったのは、最初の予定より1週間ほど遅れだった。

一応家には電話をしておいたけれど、母親はそっけない返事を返すだけだった。

自宅に帰ると、家の中には誰もいなかった。

ただ、1通の置手紙。

「いろはへ

お父さんとお母さんとお姉ちゃんの4人で舞台を見に行くので、夕飯は適当に食べなさい。

言っても仕方ないと思うけど、夏休みだからって羽目をはずしたらだめよ
母より」

はぁ、と私はため息をついた。

お母さんたち、まるで私を避けているみたい。

なんだかすごく、寂しい。

でも寂しいとばかりは言っていられない。

とりあえず、寂しさを紛らわすために、洗濯機を回して、たまった洗濯物を洗うことにした。

ぐるんぐるん。

ぐるんぐるん。

中で何が起きているのか少し気になるような音が、洗濯機から聞こえる。
洗濯機の置かれている、脱衣所の窓から外を見ると、今にも空が泣き出しそうだった。

雷様、悲しいのかな。

私と一緒だね。

私は洗濯機の前に体を丸めて脚を抱え込んで座り、顔を伏せた。

遠くで雷鳴が聞こえると、同時にざーっという雨の音が急に聞こえてきた。

通り雨かな。
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