First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜

S2 学級委員長

始業式は無事に終わった。

私と紅は並んで階段を歩き、教室に向かった。

一足先に職員室に戻っていた先生たちは、もう教室にいた。

井上先生の周りには女子が群がっている。

「はぁー、あの子達、ほんとバカみたい。かっこいい先生なら誰でもいい、って感じだよね」

紅は深いため息をついた。

本当にその通りだ。

教師に憧れる気持ちなんて、卒業すればはしかのように引いていく。

いつしか思い出すこともなくなるだろう。

私は井上先生の方をちらっと見たけれど、薄い笑みを浮かべたまま、楽しいとも楽しくないとも取れるような表情で生徒と話していた。

「私だって井上先生はかっこいいと思うけど、あの子たちみたいにはなりたくないな」

紅はさばさばとした口調で言った。

そうだよね、教師と生徒なんてありえないよね。
でも、そう思う一方で、井上先生が春雪であることを願っている私がいる。

女の子の心は、とっても複雑なんだ。


「えー、じゃあホームルームはじめます。私は担任の岩沢です」

教室中がシーンとなる。
岩沢はかまわずぺらぺらと自己紹介をはじめ、みんな一気にしらけムード。

井上先生は静かに入り口の脇に立っている。
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