First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜

S3 優しさに触れて

車の中には私の嫌いなクラシックが流れていた。
お父さんとお母さんの趣味だ。

私は耳障りな楽器の音に耳を塞ぐように、iPodのイヤホンを耳の穴に突っ込んだ。

私の好きなバラードばかり集めたiPod。

私が高校に入学したときに、お祝いに親戚の叔父さんが電報と一緒に送ってくれたものだ。

家族でさえお祝いなんかしてくれなかった。

そんなだったから、叔父さんの贈り物には心が温まった。

ありがとう、叔父さん。

車の中の席順は運転席が春雪、助手席がお父さん。

後ろの席にお母さんとあきは姉ちゃん。

そして最後部に私とかずは姉ちゃん。

いやな席順だな。

あきは姉ちゃんも嫌だけど、かずは姉ちゃんもあまり好きじゃない。

ただ、隣がお母さんじゃないのが唯一の救いだった気がする。

かずは姉ちゃんは携帯をいじりながら、片手はポテトチップスの袋に突っ込まれている。

さくさくとした食感が人気のお菓子だ。

私がお菓子を食べるかずは姉ちゃんを見ていたら、

「何よ、いろは。食べたいんでしょ。でもあげないよ」

「…別に」

「んとにあんたって可愛くないよね。なんで家の家族なんだかわかんない」

それは言いすぎなんじゃない?
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