First Kiss〜先生と私の24ヵ月〜

S2 in the sky

空に雲がぽっかりと浮かんでいた。

綿飴みたいだな。

春雪を待ちながら、屋上のてすりに寄りかかり、空を見上げていた。

時間は午後3時。

ここに来る前に職員室を覗いたとき、春雪は生徒と楽しそうに話していた。

久々にみる、春雪の心からの笑顔だった。

最近、春雪のああいう笑顔みてなかったな。

そうため息をつきながら、職員室を後にした。


屋上には誰もいなかった。

あるのは、誰かが吸ったタバコの吸い殻。

きっとどこかの男子生徒が暇つぶしに吸ったのだろう。

いけないのになぁ、と思いながら、足で踏み潰す。


春雪はいつ来るんだろう。

もし来てくれなかったら。

私のこと、嫌いになったのかな。

どうして鍵のこと、内緒にしていたのかな。

聞きたいことは山ほどあった。

でもどれも言葉の前では力をなくしてしまうような気がした。

春雪は、きっと何か事情があるんだ。

そうに決まってる。


私は風になびく髪を押さえながら、屋上の入り口の扉を見つめていた。

ぎゅいーっ。

扉がきしむ音がした。

思い切り勢いよく振り返ってしまった。

でも、そこに立っていたのは、春雪ではなく、紅だった。
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