君とのキスの意味
「雪乃さん・・・」

無意識のうちにそう口にしていた。何で俺の名前?

雪乃さんの事は、みんなが普通に名前で呼んでいるから、俺が呼んでも不自然にならないだろうと話したんだけど・・・

俺の方は「やめておこう」て事だったよな?

「みなさんが、野球場の方に移動しようかって・・・」

「そう・・・」

俺の後ろにいた水野君に、雪乃さんが声をかける。

「水野さん、お昼はごめんなさい。おかげさまで、賑やかにお弁当をいただきました」

「私の方こそ、本当にごめんなさい」

水野君は俯いたまま、ペコッと頭を下げた。

「尚子さんの所に、行ってきます」

そう言うと、芝生広場の中に向かった。

さっきまで、とても身近に感じていたのに、その小さな背中は、とても遠くに行ってしまったようだった。

< 76 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop