恋の心理学を実践しましょう?



 わたし、敷島睦美(しきしまむつみ)は、ネットコンサルティング会社で営業事務をしている。
 中途採用で入社して、二年目になる。

 最初は総務部に配属されていて、今年営業部へ異動になった。
 営業事務員の主な仕事は、営業マンのサポート――女房役のようなもので、ペアを組んでいるのだけれど。

 ペアになっている営業マン、大瀬恭平(おおせきょうへい)さんへの苦手意識が拭えず、プレッシャーを感じる日々なのだ。

 大瀬さんに見られていると思うと、緊張して作業がはかどらない。
 大瀬さんと打ち合わせをするときには、必要以上に喋って空回りしてしまう。
 大瀬さんに同行して出かけることが決まっている日には、前日の夜に安眠できず、当日無駄に早起きしてしまう。


 大瀬さんの名前は伏せて、心理カウンセラーの柏葉さんに相談したところ、

「それは恋ですね」

 と診断されてしまったわけだ。

 まったく自覚はなかった。

 だけど客観的に心理の専門家に断言されてしまうと、そうなのかもしれないと一気に自覚が生まれた。


「ど、どうしたら……いいんでしょう」

 社内恋愛なんて困る!
 
 大瀬さんに気持ちを知られて、仕事上の関係が壊れてしまったら。


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