嫉妬深い狼と同棲生活?!






「……悪い、何か変なこと言ったわ。」





圭斗は少ししてハッとしたのか
私から退いて視線を逸らしながらも
私の体を起こして、そばに座る。






「私も、ごめんね…。
不安にさせるようなことしちゃって。」

「…俺もごめん。今酔ってるからさ。」





そう言う圭斗。

いつの間にお酒を飲んでいたのか
思えば少々顔が赤い。

やはりお酒が弱いらしい。







「…酔ったついでだから、言うけど」




そう言って圭斗が私に話し始める。




「…俺さ、大人の癖してすげぇ嫉妬深いし、独占欲も強くて餓鬼っぽいんだよ。」





圭斗は片膝を立てて座り
少し下を見ながら前髪をかきあげる。




酔いのせいだからか、圭斗が妙に素直だった。

こんなこと、いつもなら絶対言わない。




黒髪短髪で片耳ピアスの空いた
長身の厳つめなお兄さんが

いつもはイメージ通りクールなのに
今はこんな可愛い様子で、年下の青年に見える。





だけど不意にこちらに寄越した
鋭く色っぽいギラギラした視線は

ドキッとするくらい、"野獣"を感じた。






「…相手が関西訛りの年下の学生だろうが、身近の同級生だろうが…

俺はお前のことになると余裕ねぇんだよ。」







わかる?

そのくらい俺はお前に夢中なんだよ。





そう言った圭斗の顔が
酔ってるせいなのか、それとも照れなのかわからないけど、先ほどより赤くなっている気がした。


私も少ししてから
段々と顔が赤くなるのを感じる。







「け、圭斗…照れ、て…る?」

「っ…うるさい、悪いかよ。
こんなん酔ってるから言えるんだぞ。」





そう言いながらたまらず視線を逸らして頭を掻く圭斗。

その姿が珍しくすごい可愛くて
無性に抱きつきたくなった。


------愛おしい。








「…で、何でニヤけてたわけ?」

「あ…それはね」






圭斗は聞かずにはいられない、といった様子で私に聞いてきた。

先程は気持ちが抑えられず
聞くのを後回しにしたけれど
気になって仕方なかったらしい。







「少し関係がうまく行ってなくて…。
だけど仲直りみたいなのが出来たから、嬉しくてつい…。」

「…へぇ。」





機嫌を少し悪くはさせながらも
大した理由でなかったことに安心したのか、怒ることも特になかった。





(ふぅ…変な誤解が無くなってよかった。)





私がホッとしていると

圭斗が私の片方の頬を指で軽く引っ張る。
なにー?と圭斗を見れば


真剣な顔のまま静かに





「…どこにも行くなよ。」





"俺のそばにいろよ"



そういった意味と取れる言葉を呟く。

私はそれに静かに
「…はい…。」
と答える。





何か
すごい嬉しい、何でだろう。


怒られて噛まれて…誤解されて散々だったのに、何かすごい嬉しい。




きっと…圭斗が素直な気持ちを教えてくれたから。

独占欲でも…愛してくれてるって伝わってくるから。







「…圭斗。」

「ん…?」

「-----好き。」







お酒に弱い彼が勢いで言ってくれた
最初で最後かもしれない素直な言葉に

私はこれ以上ない幸せを感じた。







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