元通りになんてできない


「…」

「出来ると…、そこまで考えていたか?事実、責任の置き所、違って来やしないか?
…俺は帰るから…。鷹山についててやってくれ」

「…はい。……有難うございました。…すみませんでした」

「じゃあ、な。おっと。
看護師が俺を旦那だと誤解してる。また後で点滴の処理で来るから、幸元が誤解を解いておいてくれ」

「…解りました」

「それじゃあ」

「…はい」

ポンポンと俺の肩を叩き、ひとつ頷いて部長は帰っていった。

部長…。本当は部長だって居たいはずなんだ。呆れるほど頼りない俺…。
…だけど、俺に。


薫さん、ごめん…。
取り返しのつかない事になるところだった。
ベッドの横に座り、顔を覗いてみた。
静かに寝息をたてる薫さんの手を握り、俺はやる瀬ない気持ちと安堵感とで顔を見つめていた。



コンコン。

「鷹山さ〜ん…、失礼します、ね…あ、ら?」

あら、え?イケメン!さっきの渋い男前さんといい、この人も、身長も高そう…、タイプは違うけど…、お身内の方かしら?

「あの、ご主人は帰られました?えっと…、鷹山さんの弟さんかしら?」

「…ええ…、いや、まあ。…急な用ができて帰りました。それで俺が変わりに…」

「そうですか。ご主人、来られた時それはそれは…、大変でしたよ。取り乱すのは、ね、当然なんですけど…、少し出血もありましたから…。余計びっくりされたんだと思います。
奥様をずっと呼び続けて。
先生に、子供、絶対助けてやってくださいって…。良かったですね、赤ちゃん、助かりましたから。…妊娠初期は気をつけていても、流産する事もありますから…。
…はい、点滴終わりました。
今日は緊急ですから、ずっといていただいても大丈夫ですので。それでは、お大事に」

「…有難うございました」
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