元通りになんてできない

幸元 猛



俺はどれだけ不器用なんだろうか。
何かに夢中になったらそれだけに集中して、他と同時進行は難しいのだろうか。
焦ってもどうにもならないけど、何もかも余裕でかわせる大人になりたくて…。

それにはまず仕事が出来る男になろうと思い、必死になった。叱られる事も必ず自分の為になる。毎日、仕事、仕事、だった。
疲れて部屋に帰り、自分の都合で勇士に会っていた。薫さんの都合は聞かずにだ。

大事な薫さんを疎かにしてしまった。
妊娠が解る前、あんなに言ってたのに…。
ドキドキしたいから。まだ始まったばかりだから。だから、一緒に暮らすんじゃなくて、しばらくはこの感じがいいって…。

俺は成長するのを待たせている事の焦りで…。
薫さんを抱きしめる事も、有難うも、…好きだと言う事も無くなっていた。
頑張って勇士の子育てをしている薫さんを労う事も…。俺は自分がしたい事だけ…。
勇士と遊ぶのも、一緒にご飯を食べるのも、俺の都合に合わせて…。
それでも薫さんは喜んでくれた…。

気長に俺の成長を待とうとしてくれてた…。
…好きなのに。こんなに好きなのに…。分かってると思ったからか。
何故、好きだよと言わなかった…、有難うと抱きしめなかったんだ…。
存在してるからこそ、返って疲れさせたんだな。

根っからの未熟者か…。
幅も奥行きも深さも…拡げられないままだ…。
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