元通りになんてできない


「おかあさん、てんとうむし〜。とんぼさん…、あっ、にげた」

「てんとう虫、どこ?」

「ここ、ここ」

「そ〜っとね、そ〜と。はい」

知里の手に乗せた。

「うわぁ、ちいさい…」

「怖い?」

「こわくな〜い、かわいい」

手の平にのせて、片手も添えてベンチに向かって歩く。

軽く持ち上げて知里を座らせた。
隣に座った。

「かわいい。ね、おかあさん」

クルクルと知里の手の平で回っていた。割と逃げないものだ。

「うわっ、きいろいの」

どうやらてんとう虫から液体が出たようだ。

「うわぁ、とんだぁ」

「知里、手、洗いに行こうか」

「うん」

水道目掛けて走っていく。
足を取られて転ばないかな、芝生の上は割と走りづらいから。

先に着いた知里が、早く早くとピョンピョンして待っていた。


「おかあさん、あお、あお、あおのおはな」

歩いて追いついた私に、知里が指す先、桔梗が咲いていた。

「え?本当、綺麗な青い花ね」

「おかあさん、たけるといっしょ。たけるのおようふくといっしょ」
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