白雪と福嶋のきょり

10:23

北寄りの土地で生まれ育った身体には、この土地の気候は色々と体力を奪われる。

突き抜ける空。空に映える赤屋根。体感した事のない気候。痛みを感じる程の日差し。先が見えない瑠璃色の海。

同じ国だとは到底思えない。

「あ!”イモ”だ!”イモ”!」
「…”二”だろ」

朝街を出発して教師の作る輪の中で列を乱しながら異国と言っても強ち間違ってはいないと思う程の風景に忙しなくだらける身体を動かしていた前の生徒が、クマノミを指差して何故か喜ぶ。

遠く離れた土地。旅行。団体。

たったそれだけでこの慣れない気候に既に順応してしまっているそいつに、呆れ半ば感服する。

けれど、それは決してそいつだけという訳ではなく。

自分と同じ様に気候に順応しきれずにだらけている奴らの横で空港でそんなに記録に残す物がある筈もないのに無闇にシャッターを押すやつもいれば、沖縄生まれの歌手の歌を合唱する奴らもいる。

この2パターンのタイプは一体何が違うのだろうか。体質かメンタルか。

どちらにせよ元々夏が苦手な自分はこの旅行中にこの気候に順応できる気が全くせず、思わず生温い息が鼻から漏れた。
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