白雪と福嶋のきょり
全ての灯りが消えてしまった丘の上は、先程までとは全く別の場所の様な顔をしていて。

静まり返って不気味なその空間を、夜に隠れて見えなかった車のライトが鋭く照らす中。

東雲とぎこちなさの残る白雪と蝋燭を詰め終えたケースを車に積む作業を数度繰り返し、二往復分のケースを残すだけとなった頃に、至極苦手な通り過ぎる声が静かだった丘に響き渡った。

「徳田何してんだお前。」
「姫酷いよ!抜け駆けなんて!」

息を切らせながら白雪を濃い化粧で縁取られた目で鋭く掴む徳田は、有無を言わせないと白雪の困惑する声を遮って必要もないのに叫ぶ。

その目に掴まれ意見を遮られてしまっている白雪が、どう言えばいいのかを模索しているのが小さく開かれた口元で分かった。

白雪と俺の関係は変わっても白雪自身は何も変わってはいないから、癖さえ見つければ白雪の心境は至極掴みやすい。

「クジで決まった事だろ」

このまま放っておくと永遠に目と声で白雪を困惑させ続けそうな徳田と白雪の間に入り、彼女を制止させる。

「福嶋、」

後ろから白雪の少し弱った声が、微かにけれど確かに鼓膜を震わせた。

面倒なのか興味を持っているのか、一向に東雲が動く気配はなく。

白雪の斜め後ろで息を潜めてこの状況を傍観している様だ。
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