俺様男子の克服方法(短)


「ここのメロンパンが旨いって聞いたが」
「……はい?」
「奢れ」

め、メロンパンを?
似合わないー!
堪え切れず笑うと鋭い目で睨まれる。
怖くないが、ここは自分を抑えつける。
これで最後。
そう、唱え続けて。

学食に案内して、テーブルに座ってもらった。
女の子の視線が痛くてしょうがないが、我慢。
メロンパンを買ってきて、俺様に渡した。

「甘いの好きなんですか?」

美音は用事思い出したとか、子どもの嘘よりわかりやすく目を泳がせて逃げた。
さすがにね、私も人間だから、俺様の前に座ってあげましたよ。
買ってきてハイ、サヨウナラはないと思いまして。
会話したくないけど少しは気も遣いましたよ。
無言でいるのも辛かったもので。

「普通」
「じゃあ、メロンパン好きなんですか?」
「うるせぇな。黙って食わせろ」

無用な気遣いだったらしい。
それくらいで怒んないでよ。
ほんと俺様って好きになれない。
そこは優しく質問に答えるべきだろうが。
何が悲しくて俺様がメロンパンかじっている所見なきゃならないんだ。

大学自慢のメロンパンを口に入れた瞬間、俺様の顔が緩んだ。
鋭い眼光は消え失せ、幸せそうに目を細めている。

「旨い」

あっと言う間にひとつ平らげた。

「何個でもいけるな」
「それはよかったです」
「なあ、また食べに来ていいか?」

いつも命令口調なのに、急にお願いしてくるなんて……ズルイ。

「勝手にすれば」

俺様から視線を逸らし、学食で動き回るおばちゃんを見て呟いた。




 常に命令口調、たまにねだるような口調。
 (統一しろよ)


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