雨に咲く花
第1章
 その泣き顔があまりにも美しかったから
俺は彼女に恋をした。





 「おはよう、暁(あきら)」

「おぅ。おはよう、香代(かよ)」

朝の喧騒に包まれた校内で周りの目を
気にすることなく俺に声をかけてくるのは
隣のクラスの山下 香代と

「はよーッス、2人とも早くね?」

コイツぐらいだ。

「あっ。おはよう、真洋(まひろ)」

「お前が遅いんだよ」

「そうか?」

「俺が言うのもどうかと思うけどな」

「?? なんで?」

「いや、なんでって。
 俺はお前ほど頭良くねぇし、不良じゃん」

「まだ、んなこと言ってんのか…………
 てかさぁ、間に合えば良くない?」

「まぁな。否定はしない」

「2人とも、いつまでそんな話してんの?
 私は会話にいれてくれない訳?」

俺たちは、実のない会話をしつつ4階にある
3年の教室を目指す。
その道中、俺たちが他の生徒にぶつかる事はない。正確に言えば、俺たちを見た生徒が
道をあけるのだ。

「2人と歩いてると
 皆が道をあけてくれるから良いよね」

「いいのか?」

「うん。だって、誰も2人に
 関わろうとしないってことでしょ?
 つまり、この辺で最強と言われる2人を
 私は独占出来る訳じゃん。
 何かあったら頼れるし、良いことだよ‼
 真洋もそう思うでしょ?」

「うん。お前って、肝が据わってると思う」

「殴る?」

「…………いや、冗談だから。
 グーは止めようか」

「じゃあ、パー?」

「暴力反対‼」

「私だって冗談だよ?」

「今のは真洋が悪いな」

「暁まで⁉」

「そういえば
 2人は今日の放課後空いてる?」

「放課後?」

俺が、真洋を無視し香代に聞き返すと

「そうっ‼」

香代は瞳をキラキラと輝かせて頷いた。
これは否とは言えねぇな。

「俺は、ヒマだよ。真洋はどうなんだ?」

「行き先によるなぁ」

「香代、どこに行く予定なんだ?」

「それは、秘密。
 行ってからのお楽しみ♪
 帰り、教室にいてねっ」

「了解」

「えぇ~」

「真洋、分かった?」

「ハイッ」

「じゃあね」

香代はそう言うとクラスに向かった。



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