みんな、ときどきひとり





学校には、中庭がある。

さほど広くはないけれど、お弁当を食べたり、軽いキャッチボールをしたりするくらいのスペースはあり、足元には芝生が広がっている。

ベンチがみっつ間隔を置いて並べられていて、いちばん左に腰をかけて、食べ終わった菓子パンの袋をくしゃりと潰した。

スウッと空気を吸い込むと、緑の匂いがする。

上を見ると、桜の青々とした葉が幾重にも折り重なるように見え、その隙間には太陽から伸びた長い足が、わたしを照らしていた。

「田口」と、名前を呼ばれて、校舎の1階と学食を繋ぐ渡り廊下を見た。

声だけで誰かわかっていた。

その瞬間、私の後頭部にトンッと強い衝撃が走った。

「いった」

振り返る。

「ごめん。ごめん。ボールとって!」と、野球ボールで遊んでいた男の子が、わたしに向かって叫んだ。
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