みんな、ときどきひとり

「弟がいなくなったらどうすればいいんだろう。わたしがいても、お母さんは喜ばないのに」

ポツリとこぼしていた。

「そんなことなんか考えないで下さい」と、水城くんも呟くように言う。

「うん」

だけど。こんなときにも、また母の目を気にしてしまう。

だって。わたしだけずっと、よその子供みたいで。

一人だけいつも浮いてる気がして。身長も存在も。

いつも、3人家族とわたしだった。

ただ、父親が違うだけで、何でこんなこと感じなきゃいけないんだろう。

もう少し、母がわたしをちゃんと育ててくれていたら、そんなこと思わなかったのかもしれない。

あんな風に弟を思わなかったかもしれない。

母の目なんか気にしなくてよかったのかもしれない。

「先輩が、どう思って生きてくかが、大切なんじゃないですか」

そう言う彼の声が優しく沁み渡る。

いつか、考えたことがある。

大が死んでしまったら、どうなるんだろう。

泣けるのかなって、考えたことがある。

なってみなきゃわからないことだと思っていた。
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