みんな、ときどきひとり
私の知らない彼女

それから、数日経った。

体育の授業が終わって、いつものように3人で教室に戻っていた。

「優菜、この前貸してくれたお菓子の本ありがとう。今日、持ってきたから返すね」

「なに作ったの?」

「チョコケーキ。うまくいったから喜んでくれた」

「あっ、あのイケメンレシピ?あの人、名前が立派で笑うよね」

美和子が口を大きく開けて笑う。

「言えてる。全然イケメンじゃないし」

下駄箱の前に着いたとき、美和子が足を止めた。

「ねえ。なんか貼ってあるんだけど。なにこれ?」

「はっ?」

美和子の後ろから下駄箱を見ると、そこには赤文字で『死ね』と書かれた紙が貼ってあった。

「優菜の下駄箱?」

梨花は少し気味悪そうに眉を寄せて、呟いた。

思わず、声を失くした。

なんで、こんな紙が貼られているのか、なんて状況を呑みこめなかったんだ。

近くにいたクラスの他の女の子たちも「なにあれ?」とざわついていて、少し面白がっているようにも感じた。

美和子が紙を剥がしながら「あんた、人に恨まれることした?」と顔をしかめた。
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