エリート同期は意地悪がお好き

朱莉side

仕事が終わった私の元に、黒川部長がやってきた。

「…お疲れ様でした、お先に失礼します」

事務的な挨拶をして、黒川部長の横を通り過ぎる。…が、黒川部長に手首を掴まれてしまった。

…私はこの人が嫌いだ。…生理的に受け付けない。

きっと睨むと、黒川部長は寂しげな笑みを見せた。

そんな顔をされても困惑するばかりで。

「…少しだけ付き合ってもらうよ」
「…わかりましたから、その手を離してください」

諦めた私はそう告げる。すると、黒川部長は素直にその手を離した。

…連れてこられたのは老舗の料亭、敷島亭。

一緒に食事をするのも嫌なのだが。…来てしまったものは仕方ない。

店の奥にある座敷に連れて行かれる。

ちょっと料理を食べるくらいなら、店先のカウンター席で充分なのに。

溜息をつきながら、前を向いた私の視線の先に、驚きの光景が。

…接待があるから遅くなると言っていた司が、事もあろうか、専務秘書の佐々木希とキスしているではないか。
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