エリート同期は意地悪がお好き
「だから言っただろ?山ほど仕事が待ってるって」

そう言って微笑んでみせると、朱莉は少しだけ俺を睨んだ。

「毎日、朝みたいに怒鳴ってくれてれば、こんなに仕事溜められなくてよかったのに」
「…仕方ないだろ?…朱莉がいないと、身に力が入らないんだよ」

「・・・もぅ、困った人たち」

そう言いながら、少し呆れ気味に笑った朱莉。

「そんなに焦って、仕事終わらせなくてもいい。どの仕事も、期限が長い奴ばかりだから。今日は、また急な異動で疲れただろ?早く帰ろう」

そう言うと、朱莉からキーボードを奪い、作成中の物を保存して、勝手にパソコンの電源を落とした。

「まだ大丈夫だよ?少しでも、遅れを取り戻したい」
「…大丈夫じゃない」

「…私は大丈夫だって」
「…俺が大丈夫じゃない」

その言葉に、朱莉は目を瞬かせる。

「朱莉と早く二人きりになりたい」
「///!」

俺の甘い言葉に、耳まで赤くなる朱莉。

そんな朱莉が可愛くて、自然と笑みがこぼれる。

「もぅ!笑うな!」
「…朱莉が可愛いのがいけない」

その言葉に、更に顔を赤くさせた朱莉は、カバンを持つと、俺から逃げるように席を立った。

・・・逃がすもんか。

俺は朱莉の手首を掴んだ。
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