エリート同期は意地悪がお好き
その問いに、朱莉の酔いは、一気に冷めてしまったのか、目を見開いて固まっている。

「…朱莉?」
「…今の、聞かなかった事にして‼︎」

真っ赤な顔でそう叫んだ朱莉は、靴を無造作に脱ぎ捨てると、逃げるように部屋の中に入って行く。

…が。そう簡単に逃すはずもなく、俺は、朱莉の腕を掴むとグイッと引っ張り抱きしめた。

「…司、離して」
「離す分けないだろ?」

「あ〜もぅ…お願い」
「そんな大事な事、聞かなかった事にできるわけないだろ?」

「もう、私、26だよ?バー…バージンなんて、重すぎるでしょ⁈…だから」

「…何が重いんだよ?俺は、逆に、嬉しいけど」

「…」

バタバタともがいていた朱莉の動きが止まる。

…そりゃあ驚いたよ。5年も付き合ってた彼氏がいたのに、バージンなんて誰が思う?

…この会社に入ってずっと恋い焦がれた相手が、まだ、誰にも汚されてないと思うと、嬉しくて仕方がない。
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