君のいない世界なんていらない


「あんた、馬鹿だ」

薄れゆく意識の中、勇者の声が聞こえる。
いや、勇者の声というか…アイの声。口を動かしているのは勇者だけど。

「誰よりも優しいくせにたくさんの人を傷付けて。
私が死んで、そんなに悲しかったの?」

そうだよ、悲しかったよ。
君の死は、例えようのない絶望を僕に与えた。

「ごめんなさい」

アイは謝った。僕は目を閉じた。

アイは謝る必要ない。

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