それは危険なラブミッション

パーティドレス試用ではなかったものの、ちょっとしたフレンチなんかも食べに行けそうだ。
そんなワンピースをほんの数時間、仮に着るためだけに下ろしてしまうのは勿体ないと思ってしまう。


「1階に入ってるセレクトショップのものなんだけど」

「1階って、このホテルのですか?」


そういえば以前、友人の披露宴で来たときに、開始まで持て余した時間をその店で過ごしたことがある。

どの服も素敵だったのだけれど、すぐに手を出してレジに持っていくにはちょっとした勇気を要するものだった。
つまり、高かったのだ。

ということは、このワンピースだってきっと……。

頭の中にぼんやりと浮かんだ値札に、申し訳なさが再来する。

岬さんは私の質問に頷くと、「似合ってるよ」と微笑んだ。

不意打ちに爽やかな笑顔付きで誉められて、頬がカッと熱を持つ。
恥ずかしさに俯くと、「コーヒーでも淹れようか」と岬さんが簡易キッチンへと向かった。

え、でも……

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