それは危険なラブミッション

そんな素敵な人の結婚をダメにしようとしているのだから……。
岬さんにとって私は、招かざる客だ。


「飲まないの?」


岬さんに言われて、ふと我に返る。


「飲みます、飲みます」


二度も言う必要はないというのに。
そそくさと口を付けた。

飲む場所によって、人の味覚は左右されるのかもしれない。
私もよく飲むインスタントコーヒーと同じ味がするというのに、スイートルームで飲んでいるという高揚感が、味を数段アップさせている気がしてならない。


「美味しいです」

「インスタントなのが申し訳ない」

「いえいえ」


否定してから思わずクスっと笑った私に、岬さんが目を瞬かせる。


「――あ、ごめんなさい」

「僕、何か変なこと言った?」

「なんだか、ずっと謝ってるなと思って」

「……だよね、ほんとだ」


岬さんは、照れくさそうに頭を掻いた。

立ち居振る舞いは、さすがはいいところの育ち。
けれど、態度にそれを振りかざすようなこともない。

岬碧衣の第一印象は、私の知る中では最高ランクだった。

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