ぎゅってしてもいいですか。







……うぁ……。そんなことを考えてみても、思考回路がぐちゃぐちゃで、わからなくなってきた。



とにかく今は落ち着こう。





……しっかりと地に足をつけてから────。









「よく、できるね……。好きでもない人にそんなこと……」



ふつふつと湧き上がる怒りを抑え込むかのように、突然ゆっくり、そして冷たくつぶやいた月乃。








「……え?」


動揺を隠せない。






────“好きでもない人に”。


その響きが気になった。










「私ね、好きな人いるんだ」







────────ドキンッ……


────発せられたそのたった一言に目を見張る。



その瞬間、気づいてしまった。





……本当の心臓の音の意味を。








「……そーなんだ」






それで精一杯だった。






< 78 / 421 >

この作品をシェア

pagetop