焦れ甘な恋が始まりました
 



「あ……、」


「俺さ、営業部時代……お昼に日下部さんの近くを通ると、いつも手作りのお弁当持ってきてて偉いなーって感心してたんだ」


「え、」


「しかも、チラッと見た感じでも彩り豊かで、バランスとかちゃんと考えてんだなーって。こんな弁当食べれる奴がいたら幸せだろうなって、いつも思ってたよ」


「、」


「だから、これ、食べるのめっちゃ楽しみ。仕事のあと、日下部さんの料理が待っててくれてるのかと思ったら、このあとも頑張れるよ」


「っ、」



ああ、もう、本当に。

どこまでも、罪な男(ヒト)だ。


重いはずの保冷バックを軽々と片手に持った社長は、社長が持つには不似合いなそれを見て、本当に嬉しそうに微笑んでいる。


 
< 19 / 380 >

この作品をシェア

pagetop