焦れ甘な恋が始まりました
 


そんな蘭と陽は、性格も容姿も厳格な父に似て、昔から周囲の人たちに一目を置かれる存在だった。


二人が並んで歩けば、老若男女問わず、つい振り返ってしまうような。


本人たちに自覚はなくとも、そんな風に自然と持て囃される運命の下に生まれた二人だったのだ。


かくいう私は、そんな二人とは遠くかけ離れた存在で、学生時代はよく「え、蘭ちゃんのお姉さん?嘘でしょ?」なんて、失礼なことを言われてた。


陽が高校生になってからは並んで歩くと、女子高生たちから「何あのオバサン」なんて心ない声を囁かれることも。


オバサンって……29にもなれば、女子高生からすると、もうオバサンの範囲なのね……


家族を知っている人たちから必ず言われることといえば、「杏(あん)ちゃんは、お母さんに良く似て、フワフワしているねぇ」……と。


身長もスタイルの良い妹弟に比べたら155センチと低めだし、そのくせ体型も普通。


見た目だって、お世辞にも綺麗だねなんて言われる容姿ではなくて、残念ながら私だけ、何もかもが【普通】に生まれてしまったのだ。


 
< 23 / 380 >

この作品をシェア

pagetop