焦れ甘な恋が始まりました
「でも……勿体無いから、食べるしかないよね……」
再び、溜め息と共に零した言葉。
いつまでもこんな風に落ち込んでいても、何か解決するわけでもないし。
結局、こういう時はいつだって、選択肢は一つしかないのだ。
ああ、もうっ。絶対、全部食べきってやるんだからっ。
そうして憂鬱に負けそうになる心を叱咤した私は、携帯を鞄の中へと押し込むと、重い保冷バッグを持つ手に力を込め、玄関ホールに向かって歩き出した―――の、だけれど。
「きゃ……っ!?」
「うわっ、」
廊下の角を曲がったところで運悪く、スーツ姿の男の人と、ぶつかってしまった。