焦れ甘な恋が始まりました
 



「でも……勿体無いから、食べるしかないよね……」



再び、溜め息と共に零した言葉。

いつまでもこんな風に落ち込んでいても、何か解決するわけでもないし。


結局、こういう時はいつだって、選択肢は一つしかないのだ。


ああ、もうっ。絶対、全部食べきってやるんだからっ。


そうして憂鬱に負けそうになる心を叱咤した私は、携帯を鞄の中へと押し込むと、重い保冷バッグを持つ手に力を込め、玄関ホールに向かって歩き出した―――の、だけれど。



「きゃ……っ!?」

「うわっ、」



廊下の角を曲がったところで運悪く、スーツ姿の男の人と、ぶつかってしまった。


 
< 5 / 380 >

この作品をシェア

pagetop