好きの代わりにサヨナラを《完》
スキャンダル発覚後、初の握手会が開催される。

あたしはファンと直接向き合わなければならない。

今まで応援してくれていた人がこのスキャンダルでどうなってしまうのか、あたしはその反応を見るのが怖かった。



今日の握手会では、あたしの生誕祭が行われる。

今日は、あたしの16歳の誕生日だ。

蒼はあたしの誕生日も仕事が入っているか聞いてくれた。

もし仕事が入っていないと答えたら、彼はあたしの誕生日を一緒に祝ってくれたのだろうか。



「ほのか……会いたい」と電話越しに聞いた彼のかすれた声を思い出す。

あたしはもう彼に会うことができなくなってしまった。



誰も話しかけてくれない会場の控え室で、あたしは一人スマホを取り出す。

画面を開いてみたけど、そこにはもう蒼の名前はなかった。
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