好きの代わりにサヨナラを《完》

涙のキス

蒼は、東京まであたしたちのライブを観にきてくれることになった。

ライブの前日、チケットを渡すために寮の近くの小さな公園で待ち合わせることにした。

チケットだけなら郵便で送ることもできるけど、あたしはちゃんと蒼の顔を見て渡したかった。



みんなが寝静まった夜の公園は、昼間とは違ってひっそりとしている。

遅くまでリハーサルが続いて、こんな時間になってしまった。

あたしは街灯の下で一人たたずんでいた。



オレンジ色の柔らかい明かりが、あたしの手元を照らしだす。

あたしは一枚のチケットを両手で握りしめていた。



チケットに印刷された客席の番号をもう一度確認する。

あたしはステージから蒼を見つけることができるだろうか。

あたしはチケットを持つ手を下ろすと、街灯にもたれて暗い夜空を見上げた。
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