恋 文 日 和



――あの日は、秋晴れというのにふさわしく、綿菓子みたいな雲がぷかぷかと空に浮かんでいた。


『ほら、日和早くっ!』

『ま、待ってぇー!』


高校一年生。
今思えば、お昼休みは殆ど走っていたような気がする。

一年生のクラスは、購買から一番遠いのだ。



『ほらー、日和!早くしなきゃクリームパン売り切れちゃうよ!』

『だってぇーっっ!』


そう、購買のクリームパン。

うちの学校で大人気のそのクリームパンは、学校の近所あるパン屋さんの手作りで、これがまた超が付く程美味しい。

一日20個しか作らないので、こうして走らなきゃ一瞬にして売り切れてしまうのだ。



『えーっ、もう売り切れ!?』

ようやくの思いで購買に辿り着くと、玲の声が響いて聞こえる。


人混みを掻き分けて玲の元へ向かう。
走りすぎて息が苦しかった。



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