恋 文 日 和



…………………


眠れなかった。


どんなに目を閉じても
どんなに気を紛らわそうとしても

浮かんで来るのは、神楽くんの笑顔。


そして、隣で笑う美咲さん。



布団に包まれた体は暖かいはずなのに
何故か、肌寒くて。

決まって眠りにつくのは、泣き疲れた朝方だった。




夢の中では
みんな、幸せそうに笑ってる。


神楽くんも
玲も
桜井くんも

あたし、も。

みんな、楽しそうに笑い合ってる。



なのに現実は
どうしてこんなにも

冷たく、あたしを突き放すんだろう。



泣かないように
いつも、笑っていられるように

夢の中で、生きていられたらいいのにな…。




過ぎる想いに、目を擦りながらカーテンを開ける。

朝の光が、憂鬱な毎日を連れてきて。


すぅ、っと息を吸い込んだあたしは

二週間振りの制服に着替え、リビングに続く階段を駆け降りた。






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