青空からのサプライズ
奏汰がベッドから起き上がれなくなった

いつも、部屋にいるってわかるのは

嬉しいけど

ひとりで散歩しても、何も見えないあたしは、楽しくない


だけど、少し楽しかったことを

奏汰に言うと

「結すごね!もっと聞きたい!
毎日、いろんなお知らせしてよ!」


だから、あたしは頑張った


「結、皆に手紙書きたいから、便箋と封筒を買ってきてくれないかな」


マジで!?


ひとりで行けって?


「アイマスクは?」

「とったら、帰らせるって言ったよね?」


ですよね…


奏汰の為だ!!頑張る!!


2人で出掛けた時より、何倍も時間がかかった


怖くて、さみしくて


途中で座り込む


「どうしました?大丈夫ですか?」

「え?あ!すみません!!あのアイマスクの訓練中で、ヘコんでただけです!!」

「お困りですか?」

「はい!!便箋と封筒を買いたいのですが、どこに行ったら良いかわかんなくて
あの、ヒント下さい!!」

「ヒント!?」

「自分で行かなきゃ意味ないんで!!」

「頑張り屋さんですね!ここをこのまま
まっすぐ行くと、信号のある交差点を左に曲がり、うーん、30メートルくらいかな
文房具屋がありますよ」

「ありがとうございます!!
やる気が出ました!!頑張ります!!」


あたしは、単純だ


横断歩道が苦手だけど、点字ブロックの上は慣れた


声を掛けてくれたお兄さんの教え方が

すごくうまかったから、すぐに文房具屋に

到着!!

文房具屋って、臭いがしたから

「すみません、便箋と封筒を買いたいんですが?」

「はい?色々あるから、自分で選んでくれない?」

「すみません、あたし目が見えなくなるので、訓練中なんです
男の人が使うような、シンプルなのでいいので、選んでくれませんか?」

「そう?大変ね?」



あたしは、無事に買い物が出来た!!

嬉しくてスキップしたいくらい!!

やばい!!

浮かれている場合じゃない!!

ここは、田舎


バスがなくなったら、電車にも乗れない!


来た道を少し、早く帰る


「ただいま!!」

「おかえり!!」


奏汰の声が笑っている


「買ってきたよ!!」

嬉しくて、奏汰に抱きついた

あたしは、初めてのおつかいをした後

お母さんに抱きつく子供のようだと

自分でも可笑しかったけど

今日は、かなり頑張った

これくらいのご褒美は、欲しい


「ありがとう!これで皆に手紙書ける!
結のおかげだよ!」


奏汰が優しく抱きしめてくれる




きっと、あたしにも手紙をくれる


そう思ったけど、甘かった


口で言えばいいんだとさ!!

ぷんぷん怒るけど


確かに、皆に何も言わずにここに来た


あたしは、奏汰をひとりじめだもんね






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