鈴木くんと彼女の不思議な関係

「仮に今、告って上手く行ったって、寂しい思いをさせるだけだ。俺はそういうの不器用だし、本気で勉強しないと間に合いそうもないんだ。ただ、一年後にはあいつが受験だし、あいつの邪魔もしたくない。俺の進路だってどうなってるかわからん。」

 一年後の自分を想像する。なんとか志望校へ合格したとして、新しい大学生活を目の前にして、これから受験生になる多恵に告白るだろうか。だとしたら、多恵と俺もあと数週間の縁なのかもしれない。この想いもいずれ、告白さえしなかった、高校時代の甘酸っぱい恋の記憶として、アルバムに畳まれるのだろう。

「なかなか上手くいかねぇなぁ。」
 あきらめとも悟りともとれる台詞を吐いて、会話を閉じる。神井は申し訳なさそうな顔で俺を見た。

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