甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】
6.

止まらない

「こんにちは。葵さん、お疲れではないですか?」

「大丈夫だ。都にまた会えて嬉しいよ」

「………」

この人は、こういうことをサラッと言う。

爽やかな笑顔で『会えて嬉しいよ』なんて言われたら、誰だって大喜びだろう…

いろんな女の人に言ってたんだろな…

「誰にでも言ってないから」

「…すいません」

「会えて嬉しいって思えるのも、都が初めてだから、誤解しないで」

翌日の午後、

シュウさんが指定したフラワーアレンジ2種を、葵さんの車に乗せる。

クリスマスリースを見た葵さんが

「コレ、都が作ったの?すごいね!」

「ありがとうございます。気合い入れ過ぎたかも…です」

ははは…と笑ってみる。

「籠を使ったアレンジもあるんだね。
都らしい温かみを感じさせる作品だ」

シュウさんの作品をたくさん見て、目が肥えてる葵さんに褒められると、お世辞でも嬉しい。

「ありがとうございます…ちょっと緊張してきました。
素人の私の作品を、シュウさんが見ると思うと…
写真映りが良かっただけって思われないかな…」

ドキドキより、バクバクしてきた。

「大丈夫だ」

微かに震える手を、葵さんがしっかりと握ってくれる。

…落ち着くなぁ





< 105 / 159 >

この作品をシェア

pagetop