腹黒王子に秘密を握られました
 

「もしかして、それって恋人さんから言われるんですか?」

他人から言われればただの悪口だけど、恋人から言われると意味が変わる。
自分だけにしか見せない素の顔に、優越感と愛情を込めた言葉なんだろう。

私の予想は正解のようで、西村さんは恥ずかしそうに頬を染め、小さく頷く。

「いいなぁ……」

幸せそうな表情に思わずつぶやく。
なんとなく西村さんは男の人が苦手そうだったから恋人がいるのは少し意外だけど、そんな彼女を惚れさせてしまうほど、いい人なんだろうなぁ。

「友野さん、自炊されるんですか?」

「あ、はい。一人暮らしなんで節約のために」

本当は料理は苦手なんだけど、趣味にお金をつぎ込むためには生活費を節約するしかない。
この調味料使えますよ、とか、この食材があれば便利ですよ、なんてお互い買い物かごを持って情報交換をする。

「友野さんえらいなぁ。私料理が苦手なんですよね」

「あ、もしかして恋人のために、最近料理をはじめたとかですか?」

「ええと、まぁ……」

言葉を濁して恥ずかしそうに微笑む西村さん。

もしかしたら、恋人ができたばかりなのかな。
照れる様子が初々しくてかわいらしい。

「そういえば、金子さんから聞きました?」

ちらりとこちらを見てそう言われ、突然出てきた金子の名前に、少し驚きながら首を傾げた。

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