腹黒王子に秘密を握られました
 

「ファーーーーっ!!!!」



放送されていたアニメが終わり画面がCMに切り替わった途端、莉央がそう叫びながらローテーブルに突っ伏した。

「もうほんとかっこいいー! なんだよーもう、控えめに言っても最高かよぉー!」

ジタバタと暴れながらそんなことを言い続ける彼女を、冷めた目で見下ろす。
そんな俺の視線に気づかない莉央は、口元を手で多いながらぶつぶつとよく分からない言葉を唱え続けていた。


火曜の夜。

仕事を終え莉央の部屋を訪れた。チャイムを鳴らしても応答がないので、合鍵を使って中に入ると、定時に仕事を終え先に帰ってきていた彼女は、テレビの前で正座をしてアニメに釘付けになっていた。

「お前なぁ……」

すっかり俺を無視して二次元の世界にひたる莉央に呆れてつぶやくと、彼女がハッと顔を上げる。

「金子さん……!」

ようやく俺の存在に気づいたか、と思った途端。

「最高でしたね? 最高でしたよね!? 見ました? 今のシーン。ほんと画面の中でキャラが生きてましたよね。やっばい尊い……」

さっきからさんざん首をふったり頭をかき乱したりしていたおかげで、莉央の長い髪がぐちゃぐちゃになってる。
しかしそんなことはかまいもしないで、こちらを見て顔を輝かす彼女。

あいかわらず、あきれるくらいのオタクっぷりを発揮する彼女に呆れつつ、そんな無邪気な笑顔を向けられるのは自分だけだということに、優越感をもってしまう自分も、かなり重症だと思う。

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