腹黒王子に秘密を握られました
「お前、会社でも男の社員を見ながらそんな妄想ばっかしてんの?」
「ま、まさかっ!!」
冷たい目で見られ、慌てて首をぶんぶんと横に激しく振った。
名も知らぬ男子高校生を見て妄想に耽ることはあっても、リアルな知り合いの三次元の男を相手によからぬことを考えるなんて、ありえないから!
そこまで飢えてませんからっ!
必死に否定する私を見て、金子は肩を揺らして笑いだした。
「変なヤツ……」
そう言って意地悪に笑う表情は、会社でみせるうさんくさい爽やか男とは別人で、こっちの方がいいじゃんと思ってしまう。
「あ、そろそろ会社に着きますよ。会社の人に一緒にいるところを見られたくないので、ちょっと離れてください」
バス停が近づいてきたのに気付き、定期入れを出して立ち上がろうとする。
この時間に他の社員がいるとは思えないけど、万が一他の課の女子社員にでも見られたら面倒だ。
一緒に出勤してきたの? なんて変な誤解をされたくない。
するとあろうことか金子は、エスコートするように私の腰に手を回し、身体を寄せた。
「な……、なにして……っ!」
「なにって、俺たちは恋人同士だろ?」
「はぅ……っ」
「まさか、忘れてたんじゃないだろうな」
ギロリ、と冷たい視線でこちらを睨む。