腹黒王子に秘密を握られました

「じゃあ、私はお先に……」

そう言いかけた私の言葉を遮って、金子が話しかけてくる。

「友野さんって、仕事も早いし気が利くし人当たりもいいよね。宅建持ってるんだし、営業にならないの?」

お前空気を読めよ! 私は一刻も早く帰りたいんだよ! 話しかけんな!

「そんな、私に営業なんて無理ですよ」

「そう? 上からも営業にならないかって打診きてるって聞いたけど。今のアシスタント業務より残業は増えるけど、やりがいも給料もあがるよ」

残業が増えるなんて、まっぴらごめんなんだよ!
給料上がるのは大歓迎だけど、それよりも私は一秒でも長く家にいたいんだよ!
そして仕事にやりがいなんて、一ミリも求めてないんだよ!

「私は営業であちこち回るより、事務所内で人をサポートする業務の方が好きなので」

「ふーん、もったいないな」

微塵ももったいなくねぇよ! 自分の価値観を人に押し付けんな、この八方美人男が!
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