今のままで

郁斗 Side

撮影の仕事が思ったより早く終わった。

「郁斗お疲れ、久しぶりに飲みに行くか?」と山下さんが言う。

「何言ってるんですか?クリスマスですよ?美寿々が待ってるんで帰ります。山下さんもたまには早く帰ってあげて下さいよ。新婚さんなんだから」

山下さんは先月結婚したばかりだが仕事が忙しく新婚旅行にも行っていない。

「新婚旅行はいつ行くんですか?」

「いや…予定ないなぁ」アハハ…と笑う。

奥さん可愛そうだなぁ…
山下さんに自宅まで送ってもらって部屋に入るとリビングのソファーで美寿々が寝ていた。
おい…風邪引くぞ?…
俺は美寿々の体を揺すり起こす。

「美寿々、こんな所で寝てると風邪引くぞ?」

美寿々は目を覚ますと少し驚いて

「すぐにご飯の用意するね?」と言って飯の支度を始めた。

夕飯を食べ終わると美寿々はなにか言いづらそうに話しだす。

「郁斗、あのね…」

「ん?どうした?」

「えーと…赤ちゃん出来たみたい」

「みたい?」俺は首を傾げる。

「ううん…赤ちゃん出来た」

「マジ?」

「郁斗…どうしよう?」と不安げに聞く。

「どうしよう?って、美寿々何言ってるんだよ?産むに決まってるだろ?最高のクリスマス・プレゼントだよ」

俺の子供だ!最高のクリスマス・プレゼントだぜ!

「良いの?」

「バカ、いいに決まってるだろ?」

俺は椅子から立ち上がると美寿々の元へ行き抱きしめる。
そして「俺の子を産んでくれ」と耳元で囁く。
妊娠が分かっててあんな重いもの買って来るなんて冗談じゃないぞ?流産でもしたらどうするんだ。

「美寿々、あんな重たい買い物したらダメじゃないか!?」

「はい、気を付けます…」と美寿々は肩をすぼめた。

沖縄の旅行キャンセルするというと美寿々はがっかりしていたが、お腹の子の為を思うと仕方ない。
落ち着いたら近場の温泉でも連れて行ってやるか?
沖縄は子供が産まれてから3人で行こうな?

翌日、迎えに来てくれた山下さんに美寿々が妊娠したことを話した。

「そうか郁斗も親父になるのか?おめでとう。まぁ順番は逆だが結婚を発表してるしそんなに騒がれないだろう?」

「で、沖縄のチケットなんだけど山下さん使ってよ?新婚旅行の代わりに奥さんと行っておいでよ?」

「え?良いのか?」

「うん、妊娠が分かった以上やめといたほうが良いからね?キャンセル料もかかるし、山下さんには日頃お世話になってるしお礼だよ」と山下さんにプレゼントした。



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