Engage Blues
彼らの目的も不明瞭だし、これからどうしたもんだか。
対策らしい対策は浮かばないと諦めかけた時、軽快な着信メロディーが流れる。
「あ、ちょっとすみません」
気付いたようにコウがポケットから取り出したスマートフォンをタップする。
「はい。加瀬です。どうしました?」
耳に当て、対応した途端に彼の口元が綻ぶ。
あ、例の女上司だな。
「えッ、なんです? 麗子さん。よく聞こえない……」
コウがとても爽やかに笑う。
うわー。すごく胡散くさいー。
「今からですか? すぐ伺います……えッ、違う? まとめておいた企画書の場所ですか。そんな遠慮なさらずに。貴女のためにすぐ戻ります。大丈夫です。迷惑だなんて思ってませんから」
やっぱり、仕事の用件っぽい。
離れていても電話口から女性の声が聞こえてくる。激しく罵られてるみたいなのに、コウはめちゃくちゃご機嫌だ。
どんなに悪態をつかれても、アイドルみたいな柔和な顔立ちでにこにこと聞いている。
ここまで来ると、すごい気持ち悪い。おまえは真性のマゾかと突っ込みたくなる。