Engage Blues





 とっさに身を引いたものの、地震のような揺れに絶えきれず尻餅をつく。

 それもそのはず。
 ミュールのつま先、五センチ先でアスファルトの道路が円筒形に陥没していた。
 中は土がめくれ、水道管らしきパイプが剥き出しになっている。


「な、ななななな……ッ」


 腰が抜けて立てない。


 核兵器でも落ちてきたのか。
 目の前で唐突な破壊力を見せられ、まともに思考力が働かない。現状把握も難しかった。


 がくがく震えていると、カッと地面を踏み鳴らしたヒールの音がする。
 ついでに、めちゃくちゃ高らかな哄笑が響いてきた。


「お久しぶりねッ、野雀娘!」


「み、美由紀……」


 砂煙で見えなかった視界が晴れる。
 できた巨大な穴の向こう側には、女性が立っていた。

 ひと目で、きりりとした美女だとわかる。
 長所を引き出すメイク、緩く巻かれた髪、メリハリのある身体に纏うスーツ。

 彼女本人も身につけるものも、存分に最大限の魅力を放っている。


 虎賀 美由紀(こが みゆき)。
 わたしの幼馴染みにして、天敵。





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