Engage Blues
「虎賀流闘術、【獣人変化】ッ!!」
共鳴する双子の声音。
同時にさらに重くなる闘気は、砂埃をも巻き込んで視界を覆う。
再び彼らの姿を捉えた瞬間、目を剥いた。
「な……ッ!?」
眼前に現れたのは大型の虎二匹。
まさか、子トラ兄弟なのか?
虎賀家直系でも修得が難しいとされる変化術をマスターしたっての!?
事態の深刻さにひとり青ざめるも、勝手に好転なんかするわけない。
大型虎は低く唸ったかと思うと、地面を蹴って襲いかかってくる。
「……だったら、こっちも奥の手よッ!」
美由紀が現れてから念のために持っておいた。
コウからもらった秘密兵器を取り出す。
何の変哲もない、バスケットボール。
もちろん、種も仕掛けもないスポーツ用品なのに、目にした瞬間、明らかに虎の動きが鈍った。
テンッと地面にバウンドさせれば、二匹とも飛びついてくる。
同時に鳥の羽でできたブラシを振ると、こっちにも反応した。
太い前足でビシバシと狙ってくる。
見た目は、オモチャにじゃれてくる仔猫。
虎模様のでっかい猫を、視力補正すればって話だけど。