私は、アナタ…になりたいです…。
憧れの人
憧れの人は、身長180センチ越え…って、誰かが話していた。
誕生日は10月10日、天秤座のO型だ…って。
入社して5年目で、部署を引っ張る実力者になって、今もどんどんその実力に磨きをかけている…って。

だからかな。
今日もああして、話しかけられているのはーーーー。





(あっ……また呼び止められた…)


何人目?…と、数えるのも嫌になる。
屋外から中へ足を踏み入れた途端、次から次へと呼び止められてる。
まだ5メートルと進んでないよ。
お昼休憩だから無理もないけど。



「……さっきから女子に話しかけられてばっかいるよね…」


隣に立っている女性に目線を向けた。同僚の近藤さんは、長い睫毛を上下させて前を見ている。


「そうですね…。いつもの事ですけど……」

同意して頷く。
女子ばかりに話しかけられている人は、爽やかすぎる笑顔を私達に見せつけて通り過ぎていった。


「……スマイル王子って言葉が似合いすぎるような人よね。あんな人に告られる人って、どんな人なんだろう?」


呆れた口調で言うけど、近藤さんも彼のことを気に入っているうちの一人だ。


「さあ…?どんな人か、想像もつきません…」

溜息混じりに近藤さんの言葉に相槌を打つ。
その言葉とは裏腹に、心は憂鬱に浸る。


「告る」「告られる」以前に、考えたりしないのだろうか…と思う。

あれだけ多くの人に、視線を向けられる理由【ワケ】をーーー。


「いいなぁ…」と呟きかけて、息を潜める。
今に始まったことではない。あの人が、人の目を惹きつけるようになったのは。


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