吸血鬼、頑張ります。



青森県


恐山


月山いりえは瞑想をしていた。



アヤカシや幽霊、人の魂や妖怪。



様々な見えざる者が、いりえに接触を試みる。


その一体一体と語らうように、いりえは話す。



月明かりに照らされたその美貌は、この世に無い物のように美しく、妖しい。


妖艶な魅力が、いりえには漂っていた。


見えざる者ですら、恋をしてしまう美貌には、何人も声すら掛けることの出来ない張り詰めた空気を醸し出していた。



一体の式神が、いりえの前に落ちる。


半紙の人形が青白く燃えると、眉間からいりえの脳に直接働き掛ける。



いりえは黙って頷いた。

色白の横顔と、黒い髪がサラサラと動いた。


白い禊の着物と、赤い袴。

巫女と言うよりは、女神官という出で立ちのいりえ。


すっと、立ち上がり前を向く。



「おっしゃ、こりゃ楽しくなるな!」


美しい声とは程遠い、低く太い女声であった。


袖から酒を出してらっぱ飲みする。


「ングングング・・・」


五合瓶を一気に飲み干して、柏手を打つ。



パンっ!



一瞬で場の空気が清廉に変わった。


見えざる者が向かうべき場所に消え去った。


「おし、東洋魔導師組合へ行ってみっか」



月山いりえは、恐山駐車場へ歩き出した。




この女陰陽師。

とてつもない魔導を使う。

意のままに妖怪や幽霊すら操る。


世界でも類を見ない術使いであるが、人間的に結構アレだった。


それはおいおい話すことにしよう。


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