吸血鬼、頑張ります。



地下の扉は固く閉ざされている。


「あ、ここだここだ」


「王様!話を聞いてますか?」


「ごめん、香織ちゃん。ちょっと待ってて」



地下の穀物倉庫の奥に、ひっそりと、なんの意味が在るのか解らない鋼鉄の錆びて古びた扉がある。

鍵口が在るわけでも、鎖や南京錠が付いているわけでもない。


ただ扉が在るだけだった。


「確か、在った在った」

針が一本突き出た箇所がある。


「昔、母さんに聞いた事を思い出したんだけどね」


鉄観音は針に手のひらを突き刺す。


「お、王様!!怪我をしてしまいます!!」


「い、いてぇ〜っ!!」

更に鉄観音は射し込む。

錆びた針はゆっくりと血を流して扉の紋章を染めていく。


「王様!その紋章は?」

「いてて・・・。う、うん。家の家紋。血が回ると浮き上がって来る仕組み・・・」



鉄観音の血で満たされた家紋は、やがて姿を現す。


ウサギの横顔の様な家紋だ。



すっと、手を抜く。



ゴゴゴゴゴッと、扉が左右に開く。



真っ暗な入り口が顔を出す。


ヒンヤリと、湿り気を帯びた風が鉄観音達に吹いてきた。



「王様、これは・・・」


「母さんが昔、父さんの手を手当てしていたのを思い出したんだ。
幼い頃、凄くビックリして、母親に理由を聞いたんだよね」


「さあ、行ってみようか」



二人は真っ暗な扉の先に歩いていく。

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