吸血鬼、頑張ります。



「ある条件・・・」

イブは思わせ振りに間を開ける。


「な、なんだい?その条件とは?」

鉄観音は固唾を飲む。


香織と沙織は黙って聞いていた。



「死への願望が強い人間を、この森は受け入れてしまうんです」


「・・・そ、そうなんだ・・・」

当たり前の答えを、真剣に聞いてしまったと、鉄観音は思った。


「イブちゃん。富士の樹海みたいなものでしょ?」

鉄観音はイブに聞く。


「ぜ〜〜んぜん違いますよ!!王はバカなの?死ぬの?」


「ちょ、ひどくない!?言い過ぎじゃない!?」

香織と沙織は黙って首を横に振る。



「樹海はメジャーでしょ!蕪木森はインディーズっぽいでしょ!!」


「!?」


「つまり、富士の樹海は最終的には消滅の場所なんです。人間を辞めました。はい、死にましたって言う」


「!!??」


「蕪木森に来る人は、まだ死にたくないと言う意識を持つ自殺志願者なんですよ」


「!!!???」


「我々は何ですか?吸血鬼ですよね?」


「あああああっ!!そう言う事か!!」


鉄観音はようやく納得した。


「蕪木森に来る人は、まあ違法かもしれないけど、吸血鬼の虔属にしても問題が無い人って事か!?」



「正解です!王様」


サザンクロス・クリスマスイブはにこやかに微笑む。



「これで沙織さんに、同じ歳の友人の虔属が出来る事になりましたね」

沙織は嬉しそうに微笑んだ。

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