吸血鬼、頑張ります。



ひよりは感じていた。


血を吸われ、仰け反る程の快楽と共に身体中から溢れ出した力。


感覚は研ぎ澄まされ、脳内にはいかなる情報も精査され、漏らす事の無い記憶力。


満たされた気持ちと、落ち着いた精神。


心臓は強靭に脈を打ち、ドクドクと体を流れる血液が、くすぐったいほど感じる。



「何なのこれ・・・。確か首を吊った筈なのに・・・」



そんなひよりを鉄観音は見ていた。



「あなたは、吸血鬼として生まれ変わりました」


不意にイブが部屋に入ってきて、そう告げた。


状況を把握できないひより。


「はぁ?何ですかそれ?吸血鬼ってドラキュラみたいな話ですか?」


意味がよく解らない問いを返す。



「ドラキュラ・・・。あれは、創作された我々の姿。血や遺体を愛好して愛でる人間の事です」

「あなたは、この変態に血を吸われた事によって、不死身の肉体を手に入れ、バンパイアとなったのです」


ますます意味が解らないひより。


「何なんですか、さっきから。そんな事在るわけ無いじゃないですか!」

ひよりは得心がいかず、無意味な説明に腹を立てた。



「あなたが何を納得しなかろうが、私は事実を述べているのですよ?まあ、お聞きなさい」

イブは興奮するひよりをなだめて言った。
< 67 / 138 >

この作品をシェア

pagetop