吸血鬼、頑張ります。



「王。今、あのひよりと言う者は人の血を吸いました」


イブは鉄観音に告げた。

「うわ、マジで。じゃあ、虔属に成ったって事だ」


鉄観音は複雑な表情で答える。


「ひよりは余り良い形で虔属に成れませんでしたね・・・。
復讐からの吸血行動は、人を傷付けなければ血を吸えない体質になってしまいます」



「えっ?ヤバいじゃん!」


「ええ・・・。彼女にはかなり複雑な心の闇が在ったようです」


「う〜ん・・・。何とかしなきゃね。彼女の為にも・・・」


二人は悩んでいた。



「王。私はこの屋敷から動けませんので、貴方がひよりの暴走を止めるのです」


「えっ!?どう言う事?」


「復讐の血が彼女の全身を満たす前に、貴方がひよりの血を吸うのです」


「そ、そうしたらどうなるの?」


「ひよりの体から復讐の血が抜けてしまえば、ひよりがこれから人を傷付けて吸血する事は無くなります」


「そんなご都合主義が在るんだね?」


「ええ。本来吸血行動は、愛の営みの中で血を頂くもの。
憎しみに駆られた牙は、人に凄まじい苦痛と生気を絞り尽くす無気力しか与えません」


「うん」


「なので、いずれはゴーストバスターの標的に成って消滅させられてしまいます」


「ゴーストバスター?」

「世界の均衡を保つ太古から存在する人間の組織です」

「なので、王。ひよりさんの暴走を止めてきてください」



「何だかよく分からないけれど、解った。彼女は何処に居る?」


「ひよりさんは、自宅に帰ったようです。使い魔の反応は此処です」



イブは鉄観音にGPS受信装置を渡した。


「使い魔じゃなくて、GPSじゃん!いつの間にひよりちゃんにくっ付けてたの?」


「いいから!早く行ってください!ノロマが!!」


「わ、解ったよ。酷い言われようだ・・・」



鉄観音は渋々家をでて、GPSが示す座標まで、チャリンコで向かおうとした。


「王!あなたは馬鹿ですか?コウモリにでも化けて、飛んで行けば良いではないですか!」


「まだ、本格的に吸血鬼に成った訳じゃないから、変身とか無理なの!!」


イブは舌打ちをした。

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