その瞳をわたしに向けて
嫌な奴
「美月ちゃんの入れてくれるコーヒーは、さすがに美味しいねぇ」

朝から、昨日のお酒の臭いを消すためにブラックコーヒーをお願いしてくる40代後半の山崎主任


「山崎主任、これコーヒーメーカーからカップに入れただけですから…」

ニコニコとご機嫌なのか、相変わらず今日も口が軽い

「いやいや、美人が入れるコーヒーはそれだけで味が増すってもんだよ。なんたって香りちがう」


「………それだけ口達者なことが言えるなら、飲んで帰らずに早く帰って奥さんの料理でも褒めたらいいじゃないですか。」

社内恋愛で結婚した奥さんは、栄養士の資格を持っているほどの料理の達人だと聞いた事がある


「美月ちゃんが、付き合ってくるれるなら喜んで家庭を捨てるよ」


そう言う山崎主任に呆れながら

「カップは御自分で片付けて下さいね。私だって忙しいんですから」

美月もニッコリと愛想笑いを返す



バシッ


数十枚重てられた書類で後ろから頭を小突かれる


「……って」


小突かれたその後ろの頭上を見上げれば、156㎝の美月の身長の、はるか上にある冷たい視線で見下げられる


「お前が忙しそうに仕事してるところ、是非見てみたいわ」

そう言ってその長身の男は、書類を美月の前に差し出した
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